歯車党日記

オタク系フリーライター&編集者・石黒直樹の徒然日記&コラムです

アンケートとネットと出版の先行き

04/10/15-23:04
 先日書いた「アンケートハガキ」に関するBLOGについて、様々なリアクションをいただき、ありがとうございました。賛否両論、どちらも色々と参考になりました。あちこちからリンクを貼っていただいたのもうれしかったですが、まさか切込隊長氏にまでリアクションをいただけるとは思いませんでしたorz。妹祭りに関しては「それはそれ!これはこれ!」(逆境ナイン)ということでひとつ(笑)。

『このライトノベルがスゴイ!』に関する件については、主催者の方からコメントの方にお返事をいただけました。問題のコメントを出していたのは主催者サイドの人ではなく、オリジナルのネタ元である宝島社に対して異議を申し立てるわけでもないとのことなので(詳しくは当BLOGコメント欄を)。どうもご迷惑おかけしました。『まいじゃー』は『マリみて』にはまったあたりの頃はこまめにチェックしていただけに、くだんの話を耳にした時「ああ、昨今の妙なラノベブームで変わってしまったのかなあ」と少し鬱になったもので(^_^;)。

 で、本題のアンケート絡みの件ですが……どうも否定的なリアクションの方にはうまく意図が伝わっていなかったみたいで。特に多いのが「読者に負担を強いて市場動向を知ろうなんて傲慢だ」的なもの。こうおっしゃられる方のほとんどが「新作を作るための読者動向リサーチ」と「新作を読者がどう受け止めたかの結果調査」を混同しているような。アンケートハガキはあくまで後者の情報を知ることが主体ですから。前者のような意図のリサーチは、作家も編集者も独自にネットを見て回ったり即売会などのイベントに足を運ぶなどして常に行っているので。
 そして後者に関しては、単行本とかなら「売り上げ」という直接的なデータによって結果は計れますが、雑誌連載の場合は売り上げで個々の評価は計れません。そこでアンケートハガキによって個々の作品がどれだけ売り上げや読者獲得に貢献したかのデータを計るわけです。「読者に負担を強いている」と言われますけど別に強制ではありませんし、「50円切手&ハガキを書く手間という負担をかける気にならない」というのもまた評価ではありますから、アンケートを出さない事自体を非難する気もありません。でも「ハガキを出してまで自分の意見を伝えようとするやつはいない」ということは「数が少ない=一票の価値は高い」ということだということに気づいてほしい。特に単行本2〜3万部クラスあたりの作家(&作品の担当編集)にとっては、アンケートの一票は本当に貴重なものなんです。
「ホームページやBLOGで自分の意見を発信することで、何かを変えられる……そんな幻想はこと商売絡みの事柄に関しては無意味に等しい。実際に商品を買ったり、アンケートハガキを出すといった、アナログな直接アピールこそが未だに一番効果的なんですよ」と書いたのは、「ネット語るだけで終わったら(満足してたら)無意味」ということと「アンケートハガキはみんなが思っている以上に重要視されてるんだから、出さなきゃソン」だといいたかったのですのです。わざわざ手間と時間をかけてネットで何かを語ってしまうほど作品を好きになったのなら、その手間のほんの少しを作品を正否を左右するアンケートに割いてあげてほしいんです。

 これに絡んで「ハガキなんてアナログな手段は捨ててネットでアンケートをとればいい」という意見もありましたが、ハガキとネット両方ならともかく、すべての読者がネットでアンケート投票をできるわけではないのでネットへの完全移行はまずないでしょう。そしてネットでのアンケート投票に関しては「組織票対策」「買った人だけが投票できるシステム」を整えなくてはならない必要があります。特に後者の場合、立ち読みした時にアドレスやパスワードをメモったりして投票できてしまうようでは意味がないですし(カメラ付き携帯を用いたQRコードを使うという案もどこかにありましたが、それも立ち読みに対しては無力)。こういう点から考えると「誰でも投票しやすい(手段が整っている)」「本を買わないと投票できない」「コストが安い(集計作業自体がネット投票によるデジタル化で簡単になったとしても、そのデータを資料として整理して書類やPDFにまとめる際に人手はいるので人件費はあまり変わりません)」という点でハガキ>ネット投票なんですよね。

「ネットの意見を重要視しない出版社の方が現実の見えてないドキュン」みたいな意見もありましたが これについては以前触れた「ネット言論の信頼性」ってものに繋がります。本当にネットの意見が正しい動向を反映するのかという潜在的な不安は、ネットが普及するに連れて改善されるどころかますます強まっているように思えますし。つい最近もライブドアの新球団名募集公開アンケートが大量のおふざけ投票によって中止になってしまうという事件もありましたし、佐世保の小学生殺傷事件における「ネバダたん」ブーム、日韓ネットユーザーのナショナリズムをベースとした叩き合い、2ちゃんねるでたびたび起こる犯罪者の個人情報晒しなどの“祭り”……ポジティブなものよりもネガティブなものの方が盛り上がりやすいという、パソコン通信時代から脈々と続くネットならでは特性は、その普及に合わせて拡大し続けているように思えます。マンガをはじめとする出版関係に関して言えば、明らかな問題(「作者自身によるネットでの問題ある言動」「盗作」など)があるわけでもないのに、やたらネットでアンチが騒ぐ作品・作家ほど、実際にはよく売れているという例も多いですし。
 ネットの可能性を信じるのはいいですし、可能性は確かにあると思うのだけど、それをはっきりとした結果に繋げられない限り、可能性はいつまで経っても可能性のままだと思います。否定派の意見の多くも「ネットを認めない方がバカ」で終わってしまっていましたが、そこから踏み込んで「それじゃ認めさせるために何をすべきか」と一歩踏み出した意見がなかったのが、図らずも現在のファンサイト系ネットの限界を示しているように思えました。価格ドットコムアキバBLOGのような個人の情報発信が実際の消費に結びつくという結果を出したり、かつての『ちゆ12歳』がマイナーな怪作を掘り起こしたり放送中の番組を独自の切り口で見せることで新たなムーブメントを発生させるなど、ネットで一歩踏み出した人による成功例はあるのだからマンガ作品でのファン活動で同じようなことが起こせてもおかしくはないのですが。
「俺たちは意見を言ってるんだから、出版社は見つけ出してくみ取れ」ではあまりにも受け身だし、見いださないことを出版社の怠慢と呼ぶのなら、見つけられようとしないことは意見を発信する者の怠慢ではないのだろうか。ネット上でのファン活動を一過性の「祭り」の連続で終わらせるか、市場や会社を動かせるだけのパワーへと発展させるかは、ネットに関わるファンそれぞれの意識次第なのだから。



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Posted by 石黒直樹
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